フェルールって何?歯を長持ちさせる“のり代”の重要性

2025年8月20日

こんにちは!仙台ファースト歯科ドクターの田所です。
最近暑いですね。みなさん夏休みはゆっくり過ごせましたでしょうか。私の地元の茨城ではラッキーフェスで盛り上がっていたようで、母親が最前列でノリノリで楽しんでいる動画が送られてきました。笑
ということで、今日のお題は 『ノリ』しろ についてです。
被せ物が外れた時、根は残っているのに歯医者さんが悩ましい顔をしてうなっていた経験はありませんか?
この時私たち歯科医師は、「のりしろ」について考えていることが多いです。
これを『フェルール』と言います。
実際フェルールを考えない日はないくらい、毎日フェルールと向き合って治療しています。
「フェルール、、?」
専門用語なので、聞いたことがない方がほとんどだと思いますが、歯学部生は試験にもよく出る、超重要ワードです。学生時代の私はそこまで重要だとは思っていませんでしたが、今になってその重要性を実感しています。
実はこのフェルールの有無が、みなさんの歯の寿命を大きく左右します。
みなさんにもぜひ知っていてもらいたい知識です。
今回は、工作や製本で使う「のり代」に例えながら、わかりやすく解説します。
1. フェルールとは?
フェルール(ferrule)とは、歯に被せ物(クラウン)を装着するときに必要な、歯ぐきより上に残っている天然の歯質の部分です。
特に歯ぐきの上に2mm以上ぐるっと一周残っていることが、被せ物を長持ちさせる条件とされています。ちなみにただ2mmあればいいわけではなく、最低1mmの厚みも必要です。
 では簡単に、このフェルールを「のり代」で考えてみましょう。
紙と紙を貼り合わせるとき、端っこギリギリにのりを塗っても、すぐ剥がれますよね。
でも、端から少し内側にしっかりとした「のり代」を作って貼ると、強く引っ張っても外れにくくなります。
フェルールは、歯と被せ物をしっかり固定するためののり代のようなものです。
2. なぜフェルールが大事なの?
フェルール(=のり代)があると、次のようなメリットがあります。
(1) 噛む力を分散できる
噛むときの力は想像以上に強く、奥歯では自分の体重に近い重さがかかります。
のり代があると、その力を歯の外側全体で受け止められるため、根の部分に過剰な負担がかかりません。
(2) 歯の根が割れにくくなる
のり代がないと、被せ物の土台が根だけになり、力が一点集中します。
これは、細い棒の先に重いものをつけて振り回すようなもので、ちょっとした衝撃でパキッと割れてしまいます。
根が割れると、ほとんどの場合抜歯です。
(3) 被せ物が外れにくくなる
のり代は、接着剤だけに頼らず、被せ物を機械的にロックする役割も果たします。
のり代がなければ、時間が経つと外れる可能性が高くなります。
3. フェルールが足りないとどうなる?
のり代が1mm以下、あるいは全くない状態では、いくら高価な被せ物を作っても、長持ちしないことが多いです。

起こりやすいトラブルは

被せ物がすぐ外れる

噛んだ瞬間に歯の根が割れる

根の周りに膿がたまって腫れる

結果的に抜歯になる

つまり、のり代が不足すると「貼った直後はきれいでも、すぐ剥がれる工作」と同じ状態になるのです。
4. フェルールを確保する方法
「フェルールが足りない」と診断されても、条件次第ではのり代を増やす方法があります。
(1) 歯肉圧排・歯肉切除
歯ぐきを一時的に押し下げて、隠れていた歯質を見えるようにする方法。軽度不足のときに使われます。骨との位置関係が条件を満たせば歯肉を切除する場合もあります。
(2) クラウンレングスニング(歯冠延長術)
歯ぐきや骨の位置を下げて、歯の地上部分を増やす外科的処置です。
物理的にのり代を作る方法ですが、外科手術なので適応の見極めが大切です。
(3) 矯正的挺出
矯正の力で歯を少しずつ引っ張り出し、歯ぐきより上に歯質を増やす方法。
時間はかかりますが、歯を削らずにのり代を作れる利点があります。
★ただしこれらの方法は、のり代は作れますがその分歯茎や骨を減らすため、見た目や安定性に影響することもあります。歯科医師が適応を見極めるのが非常に重要になります。
5. 抜歯の判断とフェルール
360度ぐるっと2mmのフェルール」が残せるかどうかが、保存できるか抜くかの分かれ道になることが多いです。
 少し専門的な内容にはなりますが、フェルール効果の有効性は多くの研究で証明されています。SorensenEngelman1990)は、フェルールが2mm以上確保できた歯は破折リスクが著しく低下すると報告しました。また、LibmanNicholls1995)も、フェルールの存在がクラウンの維持安定性に大きく寄与することを示しています。さらに、Naumannら(2006, 2012)のメタ解析においても、フェルールの有無がポストコア修復(根の中から上に立てる土台のこと)の長期的な成功率に直結することが示されており、臨床的にも非常に重要な要素であることが明らかになっています。
 のり代が十分に確保できないと、長期的には壊れる可能性が高いため、抜歯+インプラントやブリッジの方が予後が良いと判断されることもあります。
つまり、抜歯か保存かは「根が残っているか」だけでなく「のり代を作れるか」でも決まります。
6. 実際の例
奥歯の大きな虫歯で、歯ぐきの下まで溶けてしまっているケース。
根は健康でも、歯ぐきの上に出ている部分(のり代)がほとんどなければ、そのままでは被せ物が持ちません。
このとき、クラウンレングスニングや矯正的挺出でのり代を増やせれば、抜歯を回避できることがあります。
逆に、根の形や位置の問題でのり代を作れない場合は、無理に残してもすぐ壊れてしまいます。
7. のり代(フェルール)を守るためにできること
フェルールは自然に増えることはありません。
だからこそ、普段から歯を守る生活が大切です。口腔内というのは、常に湿潤状態(水分のある環境)にあり、細菌が多く存在します。その中でみなさんの大事な歯は食事の度に外的な刺激を受け続けています。

虫歯を小さいうちに治す(←そもそも被せ物の治療に至らないようにする)

被せるときに削る量が多くなるような材質を選ばない(←すごく重要です)

定期的な歯科検診

歯ぎしり・食いしばり対策(ナイトガード)

硬い物を無理に噛まない

 治療を繰り返すことでみなさんの歯は少しずつ少なくなります。そもそも虫歯を作らないようにすることが大事ですが、修復物をする場合は、なるべく歯を削らない材質を選ぶこと(20254月更新の「保険診療と自費診療のギモン」ブログでも触れています!)、修復物がある場合は、それを長持ちさせることがキーとなります。虫歯や修復処置により一度削ってしまった歯はもう戻ってきません。そして自分の歯に勝るものはありません。
まとめ
フェルールは、歯と被せ物を長持ちさせるためののり代です。
2mmの歯質があるかどうかで、治療の成功率や歯の寿命が大きく変わります。
「フェルールが足りない」と言われても、諦める前に方法を相談する価値があります。
当院では適応症を見極めた上で、クラウンレングスニングや矯正的挺出等の処置もご提案させていただいており、残せなかった歯を残す治療もたくさん行っております。
逆に、無理に残してもすぐ壊れる可能性が高い場合は、抜歯を含めた選択を考える方が、長期的に快適に過ごせることもあります。
患者様のお口の中の状態によってご提案できる治療法はさまざまなので、お悩みの方は一度相談にいらしていただければと思います。
のり代を守る=歯を守る
この意識が、あなたの歯を長く健康に使うための第一歩です。

妊娠中の歯科治療は行っても良い??

2025年8月9日

こんにちは、歯科医師の山本です。

 

妊娠すると「歯科検診を受けてくださいね〜」と言われると思います。

普段からかかりつけがあり定期検診に通っている方であれば問題ないですが、そうでない方もいらっしゃると思います。

「虫歯があったら妊娠中でも治療できるのかな…?」

「つわりがひどくて歯磨きができない…」

といった心配をされてる方も多いはず。

 

今回は妊娠中の歯科への通院についてお話ししていきたいと思います。

 

妊娠中は体の変化が大きく、ついつい自分の健康管理よりも赤ちゃんのことを優先しがちです。
でも実は、妊娠中こそ口の中の健康管理がとても大切だということをご存じでしょうか?

今回は「妊娠中の歯科受診」について、必要性から安全な時期、治療内容、予防法などお話ししていきます。


1. 妊娠中に歯科受診は必要?その理由

冒頭でも書いたように、妊娠すると歯科受診をするように言われます。

なぜでしょう?

 

妊娠中はホルモンバランスの変化により、歯や歯ぐきにさまざまな影響が出ます。
特に増えるのが妊娠性歯肉炎と呼ばれる歯ぐきの炎症。

女性ホルモンが増えることでそれを好む歯周病細菌が増えやすくなり、歯ぐきが腫れやすくなってしまうことで少しの歯垢でも強い炎症を起こすことがあります。

さらに、つわりで歯みがきが十分にできなかったり、酸っぱいものを好んで食べるようになったり、食事回数が不規則になったりすると、虫歯や歯周病のリスクも上がります。

妊娠中の歯周病はお母さんの健康だけでなく、特定の歯周病細菌によっては早産や低体重児出産のリスクを高めると報告されています。
つまり、歯科受診は単なる口腔ケアではなく、赤ちゃんの健康にもつながる大切なことなのです。

 


2. 妊娠中の安全な受診時期と注意点

妊娠中でも歯科治療は基本的に可能ですが、体調や時期によって向き・不向きがあります。

  • 妊娠初期(〜4か月ごろ)
    胎児の器官形成期であり、つわりも強い時期。必要最低限の応急処置にとどめ、安定期を待つのがおすすめです。薬の服用などもなるべくは控えたいところです。

  • 妊娠中期(5〜7か月ごろ)
    安定期に入り、母体・胎児ともに比較的安定している時期。虫歯治療やクリーニングなど、基本的な処置であれば行えます。

  • 妊娠後期(8か月〜)
    お腹が大きくなり、長時間の仰向け姿勢がつらくなる時期。応急処置や軽い治療のみ行い、出産後に本格治療するのが無理のない方法です。

 

定期検診以外の処置はなるべく安定期に行うことが望ましいです。

 

レントゲンや麻酔が大丈夫かも気になるところですよね。

歯科用レントゲンは放射線量が非常に少なく、防護エプロンを着ければ胎児への影響はほぼないとされています。

歯科で撮影するレントゲンの放射線量よりも飛行機に乗った際に浴びる自然放射線の方が多いとされているくらいです。


麻酔薬は基本的に局所で分解されるので赤ちゃんに移行することはないので基本的には問題ありません。

ただし服薬には注意が必要です。

特に妊娠初期に色々と薬を飲んでしまうと赤ちゃんの器官形成に問題が生じる場合があります。

歯科では痛み止めは抗生物質などが処方されることが多いですが、タイミングのよっては飲まない方が良い薬もあります。

どうしても痛みがある時などは一度歯科に相談をして確認しましょう。


3. 妊婦さんが受けられる主な歯科治療と控えるべき処置

妊娠中でも可能な治療は意外と多いです。

  • 可能な治療例

    • 歯のクリーニング(歯石除去)

    • 初期の虫歯治療

    • 軽度な歯肉炎・歯周炎の処置

    • 応急処置(痛みや腫れの緩和など)

  • 控えたい治療例

    • 外科的な治療

    • 術後に痛みを伴いやすい治療
    • 全身麻酔や強い鎮静を伴う治療

    • 出産直前の大掛かりな治療

前述の通り、薬をあまり飲んで欲しくないので、外科的な治療やそのほか術後に痛みが出やすい治療などは避けたいところです。

出産後は育児でなかなか時間が取れなくなるため、安定期のうちに必要な治療を済ませておくのが理想です。

もちろんベストは普段から歯科に通い、妊娠前に最低限治療が必要な箇所は全て完了させておくことです。


4. 妊娠中に避けたい歯科トラブルと予防法

妊娠中はどういったお口のトラブルが起きやすいでしょうか。

妊娠中に起こりやすい口腔トラブル

  • 妊娠性歯肉炎

  • 虫歯の進行

  • 口臭

  • 歯ぐきの腫れ・出血

  • エナメル質の溶け(つわりによる酸蝕症)

1の部分でもでも書きましたが、特に妊娠初期は体のホルモンバランスが大きく変化し、他にもつわりや酸っぱいものを食べるようになったりと、どうしても口腔内環境は悪くなる方向へと変化しがちになってしまいます。

予防のポイント

  1. 歯みがきの工夫
    つわりで歯みがきがつらい時は、ミントの強い歯みがき粉を避け、ヘッドの小さいブラシや子ども用歯ブラシを使うと楽になる場合もあります。

  2. 間食後のうがい
    食後すぐ歯みがきできない場合は、口をすすぐだけでも効果的です。場合によっては洗口剤なども使えそうであれば併用しても良いでしょう。

  3. 食事
    偏食が出てしまうことももちろんありますが、それ以外のところでは甘いお菓子やジュースの頻度を減らしましょう。

  4. 定期検診の活用
    症状がなくても妊娠中は思わぬ口腔内環境の変化が起こることもあるため、定期検診には可能な限り通うようにしましょう。

 


5. 安心して歯科を受診するためのポイント

妊娠中に歯科を受診する際は、次のことを歯科医師やスタッフに伝えるとスムーズです。

当院含め、問診票に記入欄があることが多いです。

  • 妊娠していることと週数

  • 妊娠経過や合併症の有無

  • あれば服用中の薬やサプリメント

  • 体調の変化やつわりの有無

この辺りが把握できていれば、相談しながら治療の内容を決めていけるので良いかと思います。

またどうしても多少のリスクをとって治療を行わなければならないこともあるかとは思いますが、そういった部分の相談や同意もとても大切です。


6. 出産後の歯科ケアも忘れずに

妊娠中に治療が難しいとはいえ、出産後は赤ちゃんのお世話で忙しく、それはそれで自分の歯科治療に時間を取ることは難しいことも多いです。

しかし、妊娠中に虫歯や歯周病が進行、悪化している可能性もあります。

また、お母さんの口腔内細菌が赤ちゃんに移行するという話もあるため、可能な限り口腔内環境は綺麗にしておくべきだと思います。

基本的に授乳中などであっても歯科治療は可能です。

またお母さんがしっかりと歯科に通い、時には一緒に歯科医院を訪れ、お母さんが歯科治療やメンテナンスを受けている姿を見せることも大事です。

それによってお子さんが歯科医院という場所に慣れてくれて、自分から歯科でのフッ素塗布や検診を嫌がらずに受けるようになってくれるかもしれません。

妊娠中に応急処置で済ませていた部位などがあれば、なるべく早くに治療を再開しましょう。

後回しになってしまいがちかもですが、放置して悪化してしまっては結局治療の回数も増えてしまい時間を取られてしまいます。


まとめ

妊娠中の歯科受診は、お母さんと赤ちゃんの健康を守る大切なステップです。
安全な時期と方法を知っておけば、必要な治療も安心して受けられます。

ポイントは、安定期に必要な治療を済ませ、日々のケアでトラブルを防ぐこと。

もちろんベストは普段から歯科に通い、問題のない状態を維持しておくことです。


無理のない範囲で口腔ケアを続け、元気な笑顔で出産を迎え、お子さんにも歯の大切さを伝えてあげてください。

お困りのことがあればいつでも相談してくださいね。

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